IT業界に身を置く者として、当然「チューリングテスト」は知っておるにゃ?
AI の知能テストのことですよね?
では、その開発者は…
「○○の父」っていういつものやつですか?
で、今度は何の父なんです?
まあよかろう、今回は、コンピュータの原理を作った「アラン・チューリング」について教えてやろうかの!
出典:wikipedia
数学・暗号解読・計算機科学の研究者として知られるアラン・チューリングは、1912年6月23日、ロンドンに生まれました。
幼いころから数学や物理学の分野でめざましい才能を発揮し、まさに「天才」と呼ぶにふさわしい数々の伝説を残しています。
- わずか3週間で文字を習得
- まだ習ってもいない微分積分の問題を解く
- 16歳でアインシュタインの論文を補足(しかも正解!)
しかし、そんな天才にも苦手なことが…
理系科目では才能を発揮した一方、古典の成績が惨憺たる結果。
そのため、ケンブリッジ大学進学の際は、第一志望のトリニティ・カレッジに落ちてしまい、
チューリングは仕方なく、第二志望だったキングス・カレッジに進学します。
しかし、キングス・カレッジでは優秀な成績をおさめ、卒業後もフェローに選ばれるほど優秀でした。
チューリングマシンとは?
コンピュータ開発におけるチューリング最大の業績は、その原理を明らかにしたことです。
1936年、チューリングは23歳のときに「On Computable Number(計算可能数について)」という論文を発表しました。
この論文の中で提示されているのが「チューリングマシン」です。
実機ではなく、仮想機械
チューリングマシンは、「マシン」といっても実機ではありません。
チューリングが頭の中に描いた「仮想機械」です。
「人間が頭脳を使って行う計算を、機械に作業させたらどうなるのか?」という発想から生まれたもので、これが現代のコンピュータの原理になったと言われています。
シンプルだけど超有能!
そんなチューリングマシン、さぞかし複雑な構成をしているかと思いきや、実は「本体」「紙テープ」「ヘッド」のみで構成された超シンプル仕様。
紙テープは無限かつ情報が記録されており、ヘッドはその情報を読み取ったり、新たに書き込んだりします。
ここに「テープに書き込む」「テープを順番通りに読む」「右に1コマ戻る」などの命令、つまりプログラムを与えて動かせば、永遠に計算が出来るというわけです。
コンピュータに置き換えると、テープは記憶装置(メモリ)、本体は CPU といえるでしょう。
このように、「アルゴリズム」と「プログラム」の概念を一定の法則にまとめた論理モデルが「チューリングマシン」なのです。
機械は人間の動作だけでなく思考も再現できるか?
続いて、チューリングの興味を引いたのは「人間の思考」そのものでした。
チューリングマシンは、端的に言えば「人間の作業を再現した機械」です。
作業が再現できるのならば、思考も再現できるはずだとチューリングは考えました。
さらに、「機械が人間の知性(思考)を完全に模倣できたら、人間の知能と区別できなくなるのでは?」という疑問に行き着いたのです。
そこで生み出したのが、人工知能(AI)がどれだけ人間的かを実験する「チューリングテスト」でした。
AI の知能テスト
身もふたもないことを言うようですが、人工知能を検証するプログラムは原理的に不可能であることが、当時、既に分かっていました。
そのため、チューリングは判断を人間の手に委ねることに決めました。
5分間話題を決めずに会話して、10人中3人に機械であることがバレなければ「合格(人間並みの知能を認める)」という基準を設定したのです。
チューリングテストに合格したら本当に知能があるといえるのか?
という議論はありますが、この実験が人工知能の発展に今なお、貢献していることは確かです。
チューリングの功績:暗号「エニグマ」を解読
難攻不落と言われた暗号
第二次世界大戦中の1938年、チューリングはナチスドイツの暗号「エニグマ」を解読すべく、政府暗号学校で働いていたことがありました。
エニグマは1918年にドイツ人技師が発明した機械式暗号装置で、名前の由来はギリシャ語の「謎」。
暗号システムの基本は、平文を1文字ずつ他の文字に置き換える換字式というものです。
ただし、エニグマでは、1文字毎に文字の交換関係が変わり、その変換の組み合わせは1京ものバリエーションが可能でした。
鍵(暗号機の設定)を知っていれば同じエニグマの機械を使って復号できますが、鍵を知らずに解読するのは人間には不可能と言われていました。
解読装置「ボンベ」を開発
エニグマに対抗し、チューリングは「ボンベ」という電気機械式の装置を開発し、膨大なパターン分析を行います。
暗号文に対し膨大な量の鍵の組み合わせを試し、復号できなかったものを次々とふるい落とすという電子回路を採用したボンベは、最早、エニグマ解読専用のコンピュータといっても過言ではありませんでした。
ドイツ軍捕虜から得た情報もヒントとなり、ついにチューリングのチームはエニグマ解読に成功!
この功績を称えられたチューリングは、1945年に大英帝国勲章を授与されています。
幅広い分野で活躍
また、チューリングは理系の分野で数々の功績を残しています。
- 初期コンピューター「ACE」を単独で設計
- 計算量理論「チューリング概念」を提唱
- 生命体の模様パターンを方程式化した「チューリングパターン」を提唱
既に述べたチューリングマシンやチューリングテスト同様、「チューリング」の名を冠したものが多く残っていることからも、彼がいかに多大な貢献をしてきたかがわかりますね。
チューリングの不遇な晩年と非業の死
1952年、そんなチューリングを悲劇が襲いました。
自宅が空き巣被害に遭ったため、警察の事情聴取を受けたのですが、そのやり取りの中でチューリングが同性愛者であることがバレてしまったのです。
当時のイギリスでは同性愛は違法だったため、有罪判決を受けたチューリングは「投獄」か「ホルモン療法による科学的去勢」の選択を迫られました。
チューリングは去勢に同意したので投獄は免れたものの、その2年後、わずか41歳で自ら命を絶ちました。
チューリングの功績を称え、1966年に「計算科学分野のノーベル賞」ことチューリング賞が創設されましたが、正式な名誉回復がなされるまでには、世紀をまたぐことになってしまいました…
彼の存在なくして、現在のデジタル社会はなかったかもしれないと言われるほど、エポックメイキングな天才だったアラン・チューリング。
当時違法とされていた同性愛者、謎の多い自殺を遂げたという事情から、彼の名誉は半世紀以上も封印されてきました。
しかし、ついに2013年、エリザベス女王の恩赦により名誉回復がなされます。
キャメロン首相も声明を発表し、改めて彼の業績が称えられました。
2021年には、イギリスの新たな50ポンド紙幣の顔として、広く人々に認知されることとなるでしょう。
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さいごの一言
チャールズ・バベッジやフォン・ノイマンらと同様、アラン・チューリングも「コンピューターの父」と呼べるな!
さすが天才というべきか…
私「SHERLOCK」大好きなんですよ~!