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    メディアチームメディアチーム
    2020.05.25

    IT技術

    t-SNE(ティースニー)を使い高次元データを可視化してみる

    高次元のデータを可視化するには、高次元のデータを2〜3次元のデータに変換する必要があります。

    有名な手法としては、例えば、以下のようなものがあります。

    1. 主成分分析
    2. 多次元尺度構成法
    3. Isomap
    4. LLE(Locally Linear Embedding)

    これらの方法を用いれば、高次元のデータを低次元のデータに変換し、2〜3次元のデータとして可視化することができます。

    変換にも限界がある

    しかし、これらの方法には限界があります

    まず、「主成分分析」や「多次元尺度構成法」は線形変換を前提としているため、非線形な高次元データを低次元データに上手く落とし込むことができません。

    また、「Isomap」や「LLE」は、データの局所的な構造と大局的な構造を、同時に低次元データへと表現することが難しいことが知られています。

    問題点を解消する分析手法「t-SNE」の提案

    そこで、これらの問題点を乗り越える、「t-SNE(ティースニー)」と呼ばれる分析手法が2008年に提案されました。

    2008年の提案論文の詳細は、以下の論文を参照してください。

    「Maaten Laurens van der., and Hinton Geoffrey., 2008, "Visualizing Data using t-SNE," Journal of Machine Learning Research 9: 2579-2605.」

    それでは、「t-SNE」について解説し、「MNIST」を使った分析例を見ていきたいと思います!

    「t-SNE」の概要

    「SNE」とは?

    「t-SNE」は、「SNE(Stochastic Neighbor Embedding)」をベースとしています。

    そこで、まずは「SNE」について見ていきます。

    「SNE」のポイントは、「2つ」です!

    「SNE」のポイント1

    1つ目のポイントは、高次元でのデータポイント間の距離を条件付き確率に変換することです。

    高次元において、「データポイントxix_i」から見た場合の「データポイントxjx_jとの距離pijp_{i|j}」を、「データポイントxix_i」を平均とした正規分布に従っていると仮定して、その距離(条件付き確率)を計算します。

    具体的には以下のように計算します。

    pij=exp(xixj2/2σi2)ikexp(xixk2/2σi2)p_{i|j} = \frac{exp(-||x_i - x_j||^2 / 2 \sigma_i^2)}{\sum_{i≠k} exp(-||x_i - x_k||^2 / 2 \sigma_i^2)}

    なお、正規分布の確率密度関数の12πσi2\frac{1}{\sqrt{2 \pi \sigma_i ^ 2}}部分は、分母と分子でうち消され合っていることに注意してください。

    「SNE」のポイント2

    2つ目のポイントは、上記で計算した高次元でのデータポイント間の距離(条件付き確率)と、できるだけ近い低次元でのデータポイント間の距離(条件付き確率)をとる点を見つけることです。

    まず、低次元での「データポイントyiy_i」から見た場合の「データポイントyjy_jとの距離qijq_{i|j}」を、pijp_{i|j}同様に以下のように表現します。

    ただし、標準偏差は12\frac{1}{\sqrt{2}}に固定しておきます。

    qij=exp(yiyj2)ikexp(yiyk2)q_{i|j} = \frac{exp(-||y_i - y_j||^2)}{\sum_{i≠k} exp(-||y_i - y_k||^2)}

    このように計算されたqijq_{i|j}と、上記のpijp_{i|j}を出来る限り同じにします。

    カルバック・ライブラー情報量

    両者はどちらも確率分布なので、「異なる確率分布間の距離の指標」である「カルバック・ライブラー情報量」と呼ばれる指標を用います。

    このカルバック・ライブラー情報量をコスト関数として、それを最小化する「 yy 」 を見つけます。

    こうして見つけられた「 yy 」が、高次元データxxの低次元データ変換後のデータポイントとして解釈できます。

    「t-SNE」とは「SNE」から2つのポイントを改善した分析手法

    以上が「SNE」のアイディアです。

    「t-SNE」は SNE から2つのポイントを改善した分析手法なのです!

    「t-SNE」のポイント1

    最初のポイントは、距離に対称性を持たせることです。

    SNE ではpijp_{i|j}pjip_{j|i}が、その定義から同じではありませんでした。

    そこで、高次元データ上での「データポイントxix_i」と、「データポイントxjx_j間の距離pijp_{ij}」を以下のように定義することで、その対称性を担保します。

    pij=pij+pji2np_{ij} = \frac{p_{i|j} + p_{j|i}}{2n}

    「t-SNE」のポイント2

    2つ目のポイントは、qijq_{ij}を表現する際に、正規分布ではなく自由度1の t 分布を使用することです。

    すなわち、以下のように表現します。

    qij=(1+yiyj2)1kl(1+ykyl2)1q_{ij} = \frac{(1 + ||y_i - y_j||^2)^{-1}}{\sum_{k≠l}(1 + ||y_k - y_l||^2)^{-1}}

    なぜ t 分布を用いるのか?

    なぜ正規分布ではなく t 分布を用いるかというと、t 分布は正規分布に比べて裾が長いため、近いデータはより近くに、遠いデータはより遠くに表現できるためです。

    t-SNE の「t」は、t 分布の「t」だったんですね!

    以上、2つのポイントを SNE から変更したのが「t-SNE」です。

    「t-SNE」を MNIST に適用

    それでは、「t-SNE」を実際のデータに適用して分析してみましょう!

    MNIST データの準備・確認

    今回利用するデータは、おなじみの「MNIST」です。

    「MNIST」には、訓練データが60,000枚、テストデータが10,000枚あり、1つ1つの画像には784(28×28)のデータが含まれています。

    データ量が多いと計算に時間がかかってしまいます。

    そのため、今回はテストデータ10,000枚を使用します。

    ちなみに、別の話ですが、弊社ブロブでは、こんな「MNIST」記事も書いてます。

    featureImg2020.01.23【PyTorch入門】PyTorchで手書き数字(MNIST)を学習させるPyTorchで手書き数字(MNIST)を学習させる前回は、PyTorch(パイトーチ)のインストールなどを行いました...

    中身の確認

    まずは、中身を確認しましょう。

    テストデータとそのラベルはすでにX_testy_test に格納されているとします。

    1# dataの確認
    2print(X_test.shape)
    3print(y_test.shape)
    4print(type(X_test))
    5print(type(y_test))

    出力結果

    出力結果は、こちらです。

    1(10000, 784)
    2(10000,)
    3<class 'numpy.ndarray'>
    4<class 'numpy.ndarray'>

    画像の確認

    では、先頭のデータは、どのような画像になっているのか確認してみましょう。

    1# dataの確認
    2import matplotlib.pyplot as plt
    3plt.imshow(X_test[0].reshape(28, 28))

    出力結果は、こうなりました。

    「7」という手書き文字であることが確認できます。

    print(y_test[0]) を実行し、ラベルデータで確認しておきましょう。

    予想通り、出力結果は7 となるはずです。

    「t-SNE」の適用・可視化

    それでは、「t-SNE」を適用してみましょう!

    今回は、2次元のデータに落とし込みます。

    また、それ以外のハイパーパラメータは、ライブラリのデフォルトのままにしておきます。

    下記の通りに実行すると、X_test に t-SNE を適用でき、得られた低次元データをX_tsne に格納できます。

    1# t-SNEの適用
    2from sklearn.manifold import TSNE
    3tsne = TSNE(n_components = 2) # n_componentsは低次元データの次元数
    4X_tsne = tsne.fit_transform(X_test)

    結果の可視化

    結果を可視化してみます!

    可視化のためのコードは、下記の通りです。

    2次元の散布図上に、文字を色分けしてプロットしています。

    1# 結果の可視化
    2import matplotlib.pyplot as plt
    3colors = ['red', 'blue', 'green', 'pink', 'tomato', 'purple', 'black', 'olive', 'lightblue', 'lime']
    4plt.xlim(X_tsne[:, 0].min(), X_tsne[:, 0].max() + 1)
    5plt.ylim(X_tsne[:, 1].min(), X_tsne[:, 1].max() + 1)
    6for i in range(len(X_test)):
    7    plt.text(
    8        X_tsne[i, 0],
    9        X_tsne[i, 1],
    10        str(y_test[i]),
    11        color = colors[y_test[i]]
    12        )
    13plt.xlabel('t-SNE Feature1')
    14plt.ylabel('t-SNE Feature2')

    出力結果

    出力結果です。

    これを見ると、高次元データが低次元データへと綺麗にプロットされている様子がうかがえます。

    t-SNE で出力された、この2つの特徴量を用いれば、画像分類のアルゴリズムを比較的簡単に実装できそうです。

    さらに、出力結果を確認すると互いの関係がよく分かるようになります。

    例えば、「7」(深緑色:左上)と「9」(黄緑色:左上)は互いに近くに分布しています。

    一方で、「7」(深緑色:左上)と「0」(赤色:右下)は互いに遠く分布しています。

    ここから「7」と「9」は同じような特徴があり、「7」と「0」は異なる特徴を有していることが示唆されます。

    さいごに

    今回は「t-SNE」について解説し、MNIST データに適用してみました!

    「t-SNE」は、高次元データを低次元データへと変換する比較的新しい分析手法です。

    「t-SNE」のアイディアの核は、高次元データ上でのデータ間の距離を確率として表現し、それとできるだけ同じような、低次元データ上でのデータ間の距離(確率)をとる点を探すことです。

    「t-SNE」を用いると、高次元データを低次元データへと簡単に可視化できます。

    ぜひ、「t-SNE」をご自身のデータにも適用してみてください!

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