人工知能の父はだれ!?
人工知能の父 マービン・ミンスキー
出典:wikipedia
コンピュータ開発の過程においては、「○○の父」と呼ばれる人物が数多く存在します。
今回ご紹介する「マービン・ミンスキー」も、その一人です。
マービン・ミンスキーとは
マービン・リー・ミンスキー(Marvin Lee Minsky)は、アメリカの科学者です。
AI 研究の第一人者であり、「人工知能の父」と呼ばれています。
MIT 人工知能研究所の創設者の1人でもあり、長年 AI 研究分野に多大な貢献をしてきました。
彼はいかにして、AI 研究の権威となったのでしょうか?
ニューヨーク生まれのユダヤ人
ミンスキーは、1927年8月9日、ニューヨークで生まれました。
両親ともにユダヤ人で、父は医者、母はシオニズム運動家という家庭に育ちます。
原点は自動ピアノ
ミンスキーは幼いころから、創意工夫が好きな子供でした。
一番のお気に入りだったおもちゃは、「自動ピアノ」。
ロール紙に穴をあけて楽譜を作り、自分が作曲した曲を演奏させて遊んでいたのだとか。
ミンスキーは後に、この幼いころに味わった達成感が、人工知能に魅せられる原点だったと語っています。
兵役の後、アカデミックの道へ
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ミンスキーは、マサチューセッツ州にある一流進学校「フィリップス・アカデミー」で学んだ後、第二次大戦に従軍しました。
およそ2年の兵役の後、ミンスキーはさっそく、念願だったアカデミックの道へ足を踏み入れます。
まずは「ハーバード大学」、そして「プリンストン大学」で数学を研究。
1958年からはマサチューセッツ工科大学に籍を置き、MIT コンピュータ科学人工知能研究所の前身となる研究所を立ち上げました。
共同設立者として、同じく人工知能研究の権威である「ジョン・マッカーシー」がいます。
人工知能に至る思考プロセスの歴史
ところで、人工知能という発想は、ミンスキーが初めて思いついたものではありません。
実は、「機械に知性を持たせる」という発想自体は、古代から存在していたのです。
それでは、人類はどのような思考プロセスを経て、「人工知能」に思い至ったのでしょうか。
道具=体の能力を補ってくれるもの
人間を他の生き物と区別する要素として、「道具を使う」という行為がよく挙げられます。
人間にとって、「道具」とは「自己の身体機能を補ってくれるもの」でした。
たとえば、足の速い獲物に負けない「弓」や「槍」、固い土を砕く「鋤(すき)」や「鍬(くわ)」などです。
道具=人間に代わって作業をしてくれるもの
産業革命以降になると、今度は「人間の手作業を、道具に任せられないか」という考えに至ります。
イギリスの機織り機を皮切りに、「人間よりも正確な作業」を「休みなし」で出来る機械が、次々と発明されていきました。
こうして、機械は、人間に代わって肉体労働を行うようになります。
道具=知的作業は可能なのか?
機械のおかげで、人間は、以前よりもはるかに便利な生活を享受できるようになりました。
ここで、機械に新たな可能性を見出す潮流が生まれます。
そう、「機械に知的作業は可能なのか?」ということです。
人間の頭脳も機械に置き換えられる?
機織り機は確かに便利ですが、人間の「手」の代わりに作業をこなすだけです。
デザインや色を考え、機械に命令を出すのは人間です。
「手」が再現できるのならば、人間の「頭脳」も再現できるのではないか?
この考えが、後の「人工知能」に結びついていったのです。
世界初のニューラルネットワーク学習マシン「SNARC」
「人間の頭脳を再現する」にあたり、研究者が注目したのは「ニューロン」です。
脳内の神経細胞「ニューロン」は、ほぼ自動的に組織化されています。
これを「脳内リレー」と見なし、アルゴリズムとしてプログラム化すれば、機械に知性を与えることが出来るというわけです。
マカロックとピッツの形式ニューロン
1943年、ウォルター・ピッツとウォーレン・マカロックが、モデル化した人工ニューロンのネットワークを分析した「A Logical Calculus of the Ideas Immanent in Nervous Activity」を発表します。
これが、ニューラルネットワーク研究の先駆けです。
当時24歳の学生だったミンスキーは、この論文に大いに感銘を受けました。
SNARC を開発
それから8年後の1951年、ミンスキーは、ニューラルネットワークを利用した学習マシン「SNARC」を開発。
これが、世界初の「自己学習人工知能」です。
人間並みに賢い機械
1960年、ミンスキーは、「人工知能の実現可能性について」の論文を書いています。
それによると、
コンピュータは、人間の命令を忠実に実行する。
ある問題の解決法が見つからない時、人間は解決法を探すよう、プログラムでコンピュータに命じることが出来る。
しかし、下手なプログラムでは、コンピュータに無駄な時間を使わせるだけだ。
だが、パターン認識法を取り入れれば、コンピュータはずっと効率よく仕事をこなせる。
コンピュータは頭が良いからね。以前の仕事を思い出して、効率的に仕事をこなそうとする。
そう、プランニングだよ。
この方法によってコンピュータは、改良を重ねていくんだ
この発言は、ミンスキーの人工知能に対する考え方を最もよく表しています。
ミンスキーは、コンピュータを「命令を忠実に実行する」だけではなく、その限界を超えるものになると予想していたのです。
マーヴィン・ミンスキーさんのオススメ本
・知の逆転
・ミンスキー博士の脳の探検 ―常識・感情・自己とは―
人工知能研究に生涯を捧げたミンスキー
※画像は、ミンスキー博士ではありません
以下は、1981年にある雑誌が、ミンスキーにインタビューしたものです。
「なぜ人工知能の研究を選んだのか」という問いに、ミンスキーはこう答えました。
実を言うと、遺伝学や物理学にも興味を持ったんだ。
当時、遺伝の仕組みは、まだよくわかっていなかったからね。
だが、私が追い求めるような奥深さは、そこにはなかった。
物理学もいいとは思ったが、人工知能の問題はなかなか難しそうだった。
そこが良かったのさ。
結局私は、人工知能以外の分野にそこまで深入りすることは無かったね
2016年1月24日、ミンスキーは脳出血により、88歳でこの世を去りました。
人工知能研究に偉大な貢献をした彼の死は大いに惜しまれましたが、多くの研究者たちが彼の遺志を継いでいます。
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