インターネット回線高速化の歴史とは?
ネット回線とネット文化はどう発展してきたのか?
「インスタグラムで何枚も写真を投稿」
「YouTubeでサクサク動画を観る」
現代ではごく普通の光景が「当たり前」になったのは、実はごく最近のことなのです。
クラッシュして PC が強制終了
20年前の Web サイトは、「テキストのみ」で構成されているものがほとんど。
なぜなら、画像が掲載されたサイトは、ローディングに数十分。
さらには、下手をすればクラッシュして PC が強制終了することも珍しくありませんでした…
ただ、インターネット回線の高速化は、スムーズな閲覧環境を提供するだけでなく、様々な文化を成長させてきました。
今回は、令和の若者は知らない「インターネット回線の歴史」をご紹介しながら、ネット文化の発展の過程を追っていきたいと思います!
1980年代~1990年代:パソコン通信
電話回線を使って通信する「パソコン通信」
ネットの β 版、ご先祖様とも言うべきサービスに「パソコン通信」があります。
インターネット普及以前、1980年代後半~1990年代後半に隆盛を極めたサービスです。
電話回線を使ったダイアルアップ接続で通信を行うため、通信と電話の両方が同時に出来ないというデメリットも…。
また、ホストコンピュータにつながった回線同士でしかやり取りができないなど、かなり限定的な通信方法でした。
めちゃくちゃ遅い
そんなパソコン通信初期の通信速度は、300bps という想像を絶する遅さでした。
その後、モデムの改良とともに速度を上げていき、最終的には 14000bps にまで達します。
しかしもちろん、「bps」の前に K(キロ)も M(メガ)も G(ギガ)もついていないわけで…
現代人からすれば耐えられない遅さですが、当時はこれでも最先端のサービスだったのです。
電話代がハンパない
1995年に通信・通話し放題サービス「テレホーダイ」が開始。
テレホーダイが開始される前までは、パソコン通信ユーザーの電話代はかなりエグいものになっていたとか…
人によっては、1ヶ月に数十万円もかかることも珍しくなかったそう。
チャットの元祖「OLT」
また、この頃のパソコン通信で名物だったのが、「オンライントーク(OLT)」です。
いわゆる「チャット」のことで、モノクロの背景画面に延々と文字が流れていきます。
今の LINE などとは逆で、会話は古いものは下へ流れ、新しいものが上からやってくる仕様でした。
オフ会、ネカマも登場
チャットの草分け的存在といえる「OLT」ですが、これにちなんだ文化「オフ会」も当時生まれたものです。
ちなみに、この時すでに「ネカマ」も登場していたとか(笑)
両者とも、意外と長い歴史があったんですね。
「World Wide Web」の誕生
1989年、ついに「ワールド・ワイド・ウェブ(WWW)」が誕生します。
スイスの研究機関 CERN のイギリス人研究者、ティム・バーナーズ=リー氏が「蓄積された膨大な研究所のデータを、スムーズに見ることができる仕組みがほしい」と構築したシステムです。
パソコン通信は衰退へ
1990年に実装された「WWW」は、瞬く間に世界を席巻しました。
管理者が存在し、通信範囲も限られたパソコン通信と異なり、「WWW」はもっと自由に、世界中の人々をつなげることに成功したのです。
その後、パソコン通信は衰退の一途をたどます。
そして、最後の牙城だった大手「ニフティ」も2006年をもってサービスを終了し、パソコン通信の幕が閉じました。
史上初の Web サイトがこれだ!
ちなみに、史上初の Web サイトは、現在も閲覧することができます。
【The World Wide Web project】
http://info.cern.ch/hypertext/WWW/TheProject.html
ご覧のとおり、テキストとリンクだけのシンプルなデザインです。
ここから、私たちの知っているインターネットの世界が幕を開けます。
1990年代後半:ISDN
「軍事機密」インターネットが一般化へ
1950年代から開発が始まっていたインターネット。
東西冷戦時代までは軍事機密として扱われていましたが、1990年に冷戦は崩壊します。
政治的制約がなくなったこともあり、インターネットやコンピュータの技術は右肩上がりに発展。
1995年「Windows95」の世界的大ヒットにともない、一般市民の間にも急速にパソコンが普及しました。
デジタル回線「ISDN」へ
Windows 95 発売当時、大半のユーザーが使っていたのが「ISDN」です。
1988年にサービス開始した ISND は、やはり電話回線の応用でした。
しかし、それまでのダイアルアップ接続やアナログ接続をはるかにしのぐ 64Kbps という通信速度を実現。
しかも、「電話」「 FAX」「インターネット」を並行して使用することができるようになったのです。
やはり電話代がかさむ
当時は夢のようなサービスだった ISDN ですが、欠点もありました。
基本使用料にプラスして「電話代」がかかったのです。
「アクセスポイントに電話をして、そこからインターネットにつないでもらう」という仕組みだったためです。
当時の発想や技術の根幹に、遠くとつながる=電話というイメージが強く関わっていたのでしょう。
当時のオフィスはケーブルだらけ!
また、ISDN に接続するためには、「ダイヤルアップルーター」もしくは「ターミナルアダプタ」、さらに「DSU」といった装置が必要でした。
さらに、パソコン本体にも「電源ケーブル」「マウスケーブル」「有線LANケーブル」などが接続されているわけですから、必然的にオフィスはケーブルだらけ…
昔のノートパソコンがやたらと分厚かったのも、LAN コネクタを考慮した仕様だったからです。
2000年代初頭:ADSL 回線
ブロードバンド接続「ADSL」
ISDN よりも速い回線が一般に普及し始めたのは、1999年のこと。
最大で下り50.5Mbps、上り12.5Mbps という速度を誇る「ADSL」の登場です!
- 下り…インターネット読みこみ時
- 上り…メールなどインターネット上に送信する時
このように、下りと上りの速度が違うのも、ADSL の特徴でした。
大容量かつ高速通信の一方、安定性に難あり
ADSL が普及した2001年は「ブロードバンド元年」とも呼ばれています。
高速かつ大容量の通信を可能にしたブロードバンド接続ですが、安定性に難がありました。
時代の流れに逆らい、あえて ISDN を従来のまま活用する家庭や企業も多かったのです。
一世を風靡した「ポストペット」
この頃、爆発的なブームを巻き起こしたのが、1997年発売のメーラー「ポストペット」です。
ピンクのテディベア「モモ」をはじめとしたキュートなキャラクターがメールを届けてくれるほか、コミュニケーションや育成など楽しみ方は様々でした。
当時は画期的だった「絵が動く」サービスが人々の心をつかみ、たちまち「ポスペ」は大ヒット。
メインキャラクターのモモは、なんと2000年に CD デビューまで果たす人気っぷりでした。
ブログの誕生
光回線の普及前、ISDN とADSL でストレスフリーにローディングできるのは、テキストと画像数枚が関の山でした。
そんな時代に生まれたのが「ブログ」です。
2002年前後にかけて、ブログのサービスツールが次々とリリースされたこともあり、ブログブームが到来しました。
「アルファブロガー」登場
高い PV を得る「アルファブロガー」という言葉が登場したのは2004年。
一時期は、アルファブロガーのブログを書籍化する動きが活発に行われました。
ブログ文化は今も健在
まだ Twitter や Instagram がない時代、ブログは単なる日記としてだけではなく、SNS 的な役割も果たしてきました。
現在は、「コンテンツマーケティング」や「オウンドメディア」など、収益化のための手段としても活用されています。
2000年代中期:光回線
桁違いのスペック「光回線」
2003年、家庭用の「光回線」が登場します。
伝送媒体「光ファイバー」を採用し、1Gbps という驚異の通信速度でユーザーの度肝を抜きました。
ISDN が「kbps」だったのに比べると、まさに桁違いのスペックです。
回線の高速化にともない、パソコンもスペック向上し、デバイスが安価になってきたのもこの時期です。
日本のネット普及率を推進
爆発的ブームを巻き起こした「Windows 95」「Windows 98」。
そのおかげで、PCは一家に一台が当たり前になっていきました。
しかし、当時の日本のインターネット普及率は全人口のたった13.4%。
2000年時点でさえ、37.1% にとどまっていました。
しかし、光回線の登場により、ネット普及率は 64.3% を突破。
ついに、全人口の半分以上がネットに繋がったのです。
YouTube の誕生
2005年、動画サイト「Youtube」がアメリカで誕生します。
YouTube は年々発展を続け、現在は動画制作のプロフェッショナル「YouTuber」という、広告収入で生活する職業が誕生するほど。
5G の導入にともない、動画コンテンツはこれからさらに隆盛が予想されています。
SNS の爆発的普及
2006年には「Twitter」がサービス開始。
2007年に iPhone が発売されたこともあり、PCで主流だったSNSがアプリ化し、スマートフォンでもできるようになっていきます。
そして、徐々にスマートフォンで SNS をすることが主流になってきました。
現在では、スマートフォンで SNS をするのが当たり前の光景になりましたね。
画像をバンバン読みこんで、動画を鑑賞する…
10年前には想像もできなかった光景ですね。
2000年代後半:無線 LAN、Wi-Fi の登場
ケーブルいらず!空飛ぶインターネット回線
続いて、無線インターネット接続サービス「無線 LAN」が普及していきます。
それまで、無線インターネット通信といえば「赤外線通信」でした。
ただし、実際に使用するにはデバイスが無線 LAN 対応でなければならなかったため、一般に浸透するにはやや時間がかかりました。
Wi-Fi が普及
無線 LAN は公衆無線 LAN、主に「Wi-Fi」の普及にも一役買いました。
実は、「Wi-Fi」は商標登録名称。
無線 LAN にはたくさんの規格がありますが、もはや Wi-Fi は無線 LAN の代名詞といえるほどおなじみの存在ですね。
公衆無線 LAN は2001年に実証実験がされ、2002年から実用化されました。
スタバで仕事する「ノマドワーカー」の登場
公衆無線 LAN、Wi-Fi スポットの広まりにより登場したのが、「ノマドワーカー」です。
オフィスや自宅に縛られず、Wi-Fi のある場所で自由に仕事をするワークスタイルは、2010年には既に存在していました。
インターネットの快適化にともない、人間の活動もどんどん自由になっていったのです。
2010年代~2020年:3G、4G、そして5G へ
スマホと G の台頭
iPhone に代表されるスマートフォンの台頭と共に普及していったのが、3G、4G回線です。
地上の基地局や衛星を経由した、無線による通信システムです。
G とは「世代(Generation)」のことなので、3G は第3世代、4G は第4世代という意味になりますね。
Instagram のヒット
写真投稿をメインとするSNS「Instagram(インスタグラム)」が登場したのは、2010年。
ちょうど同時期、カメラ性能が格段に向上した iPhone 4シリーズが発売されます。
この頃から、スマホのカメラで撮った写真を投稿するのが当たり前の日常になっていきました。
5G 導入で動画文化がさらに盛り上がる
3G、4G に続く無線システム「5G」。
5Gは、2020年、日本国内で順次サービス開始予定とのことです。
5G の特徴は、なんといってもその速度!
4G の最大通信速度1Gbps に比べ、5G は20Gbps。
4G で30秒かかるダウンロードが、5G ではたった3秒で終わるのです。
通信環境がさらに快適になることから、「動画コンテンツのさらなる発展」や「IoT 家電製品の普及」などが見こまれています。
さいごに
画像読み込みに数十分かかるのが当たり前だった頃から、わずか20年で、インターネット回線はおそるべき進化を遂げてきました。
5G 普及の後はまさに秒速、瞬速の世界になっていくのかもしれません。
どんどん快適に、さらに速く、もっと便利に…
人間の飽くなき欲求と、技術者たちの弛まぬ努力が世界の風景を変えてきたのでしょう!
さて、これから私たちはどんな光景を目にすることになるのか、楽しみですね!
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